セリーヌとジュリーは舟でゆく♪
2010年 09月 24日図書館員のジュリーが公園のベンチで魔法の本を読んでいると、足早にセリーヌが目の前を通りすぎます。セリーヌがサングラスとマフラーを落として、それをジュリーが拾って追いかけるのですが、そこがまさに「不思議の国のアリス」のアリスが白ウサギを追いかけるシーンを彷彿させます。
ジュリーの声が聞こえているはずなのに、無視して急ぎ足のセリーヌ。まるでジュリーの存在はセリーヌにしか見えないもののような、そこもアリスみたい。
セリーヌがどんどん落とし物をして、全部ジュリーが拾うのですが、彼女もだんだんセリーヌの後をつけることに集中しはじめて、「落としましたよ」と言うのをやめてるし、一見まともに見えたジュリーも変。二人してとにかく変。
尾行されながら「くるならくれば?」みたいなセリーヌ。踊ってるみたいな走り方をしていて、出だしからこの映画は普通じゃないなーと思いました。フランスのおしゃれなコメディなのに、鈴木清順を思い出します。心地よい気味の悪さがあります。
古いフランス映画ってあまり観たことがないのですが、多分ゴダールとか、そのあたりのヌーベルヴァーグと言われている作品なんだと思います。セリフとか説明的なものは排除するのが良しとされていた時代というのか…。本当にまともな展開、まともな会話がほとんど無くて、実験映画です。かわいいタイトルから想像していた内容よりも、意味不明だし不気味です。
いつのまにか共同生活を始めた二人。この映画はほとんど2人のやり取りで構成されていて、彼女たちはお互いを好きみたいな、でもお互いの大切なものを盗んだり破壊したり…。何がしたいのかさっぱりです。でもなぜか目が離せません。
この二人の関係が、アリスを助けているようではめているチェシャ猫みたいです。チェシャ猫二匹がからんでいるような…。「不思議の国のアリス」の場合はアリス自身はまともで、迷い込んだ世界で登場する生き物たちが狂ってるわけですが、この映画は主演の二人が一番まともじゃないです。見ているこっちがアリスになっちゃったような気持ちです。二匹のチェシャ猫に翻弄される観客…。いつ帰れるのかな?と少し不安になりながら、先が気になって引き返せないでどんどん深みにはまっていきます。
彼女達は二人で飴を食べることによって、二人だけが見られる不思議な世界の物語にトリップします。「せーのっ」と飴を食べると、昼ドラのような雰囲気のゴージャスだけどどこか安っぽい男女が現れて、いままでの映画の流れを無視したような話が展開されます。それを見ているセリーヌとジュリー…。いつのまにか二人もその昼ドラの一部になっていたり…
ここまでテーマとか、教訓とか、メーセージが一切見えてこない映画もなかなかないです。
約3時間とすごく長い映画ですが、わけが分からなすぎて「なんだ??」と思っているうちに終了します。現実離れした不思議な世界に浸りたい方にはかなりおすすめです。


