アクセサリー作家でちょっと映画オタクな大竹真奈実のブログです。ファンタジー、妄想系映画多め。制作しているプラバン+ビーズ刺繍のアクセサリーのことやSCHOLE活動日記も。

by ohtake-j-fox

笑いと恐怖と疲労と感動の「自虐の詩」日記(長文)

中谷美紀さんの「自虐の歌 日記」を読みました。内容は中谷さんが自虐の詩の撮影前後にミクシィに書きこみしていた日記です。
この映画で私は装飾助手をしていたので、この中谷さんの本はずっと気になっていたのですが、楽しかった思い出よりも辛かった思い出の量がやや勝っていた私は、今までずっと気になりながらも読む気にはなれませんでした…。
でもなぜか急に、無性に読みたくなって、買ってその日のうちに読み終えました。やっぱり辛かった思い出もあるけど、中谷さんの文章が面白かったおかげか、楽しかったこともたくさん思い出して、ひとりで思い出し笑いをしてしまったり。
そんなわけで、私にも撮影の時の思い出話を書かせてください。


やっぱり一番思い出深いのは日活のセット!本の表紙にもなっている路地は作り物です。2階の窓に洗濯物を吊るす作業は、足場がかなり危険な状態で作業をしていたので「いつ落ちるんだろう」ってかんじでしたが、出来上がりを見るとやっぱり嬉しくなるものです。
塗装部さんが「汚し」をしていくと、どんどん路地全体に古さが出てリアルになっていきます。私も自分が設置した看板やポスターに、雨、風などによってできたと仮定した汚れを足していく作業はすごく楽しかったです。でも鏡を自然と古く見せる汚しはすごく難しくて手こずっていたら、丁寧にレクチャーしてくれた塗装部さんがいて(午前1時とかにもかかわらず)その優しさで私のイライラと眠気を吹き飛ばしてくれて感謝でした。
セットは路地だけではなくて、幸江(中谷さん)と小春(カルーセルさん)が住むパンション飛田や、マスター(遠藤憲一さん)と幸江が働く食堂·あさひ屋も一緒に作られました。そのあさひ屋の中で、美術部さんやら大道具さんやらとご飯を食べた時は、架空の食堂に迷い込んだみたいって思いました。セットっていう作り物の空間で普通に過ごす時間が、やはり奇妙で面白い経験でした。

面白い経験といえば、幸江が倒れて運ばれる病院のシーンです。撮影場所は今は病院としては使われていない建物で、普段から撮影用に頻繁に貸しているところらしいのですが、そうは言っても慣れてない私にとっては廃墟そのもので、かなり怖かったです。その上病院のシーンは自分が装飾担当していた場所だったから、いろんな意味でテンパってしまいました…。朝から手を滑らして血朔はかぶるし、よっぽど挙動不審だったのか他のスタッフにも「今日、顔がマジだ」と爆笑されるし。
やや廃墟病院の雰囲気にも慣れてきたころ、撮影には使っていないはずの部屋の前を通った時のこと。その部屋だけ昔の学校みたいに木の机が並べられていて、そこにおじいさん、おばあさん、女子高生などなどたくさんの人が座っているのが視界に入ってハッとしました。撮影しない場所になぜこんな人たちが!?と驚いて立ち止まると、全員こっちを見てるではないですか!まさか私にだけ見えるのか!?ついに私も江原さん側の仲間入り果たしたか…!?
って思ったら、ただエキストラさんたちの待機場所だったっていう。面白いというより自分にとっては恐怖体験でした。

他にも半分ネタみたいに、嬉しかったこと、怖かったこと、笑えたこと、とにかく色んなことを思い出しました。朝5時に集合して次の日の朝8時まで撮影したこと(しかもパチンコ屋の音楽を爆音で何時間も聞きながら夜が明けた)、重い荷物を運んでいたら俳優さんが「運ぶよ」と気づかってくれた(なんてフランクな人なんだ)、日活の中でトラックをオーライオーライと誘導していたら他の映画の外国人エキストラに真似されたこと、気仙沼の魚介が新鮮だったこと、年が近いスタッフ同士で恋愛話(今でもたまに飲む中だったり)などなど、あげるとキリがないです。
今思い出したのが、気仙沼の撮影なども終了して、もうスタッフがこうして集まるのもついに最後という日。中谷さんからすべてのスタッフにお花が配られました!中谷さんの撮影はもう終っていたのに。あれは感動しました。

中谷さんは大好きな女優さんの1人です。元々好きでしたが、仕事に対する姿勢や、全員のスタッフの名前を覚えてくれるところ、誰に対しても気さくな態度であることも知って、素晴らしい人だと感じたからです。
その時は中谷さんはきっと「女優という職業が本当に好きで、すべてを仕事に注いで生きている方なんだろうな」って思っていました。そこがすごいところなんだけど、「私とは全然違う世界の人だし、私はそこまでこの仕事を心からは楽しめないな」なんてことをぼんやり考えていました。

でも、日記を読んで驚きました。中谷さんは、凄いプレッシャーで逃げ出したいくらいだったようで、撮影中は何度も映画なんてもう出ないって思ってたみたいです。仕事命というより、自分の時間も大切と考えるようで、あの忙しさの中、頻繁に自炊していてびっくりでした。それに本のあとがきには、『「撮影に携わる人間の非常識な行い」にショックを受けた』ということが書かれていて、そこが一番驚きました。中谷さんがショックを受けたこととは「通行中の人々を無理矢理足止めする」とか「大声で仲間をなじる」とか「深夜もこうこうと照明を灯す」とか「他人の靴を平気で踏み付けて歩く」などなど、私も疑問を持ちながらやっていた(または、されていた)ことでした。でも映画の現場は、そんなこといちいち気にしていたら仕事にならないでしょ?っていうことなんです。それが当たり前の世界なんです。
あんなに沢山の映画に出演している女優さんが、そういう「現場では当たり前」であっても「普通の人の非常識」だってことを忘れずにいて、疑問をもちつつも我慢して、仕事を全力で頑張っているんだなーって思ったら、更に尊敬してしまいました。たまーに漫画の世界のように、下っ端スタッフにはゴミのような態度をとる人もいる中、名前まで覚えてくれて、体調まで気づかってくれるような主演女優さんって、なかなか居ないと思いました。そんなわけでつい熱くなってしまいました。

病院のシーンの装飾はツッコミ所満載なので、目をつぶって欲しいけど、映画自体はかなり面白いです。爆笑しつつ、うっかりしていると泣きます。中谷さんはもちろん、阿部寛さんのしゃべらない演技も最高。というより出ている人みんな面白い。超細かいところに監督の笑いのセンスが光っています。気仙沼のシーン(幸江の中学生時代)もおすすめです。
こんな長文を読んでくれた人ありがとうです。(毎回長文だけど)もし観た人いたら感想きかせてください!
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by pop-cult | 2008-09-04 01:58 | 日本の映画