アクセサリー作家でちょっと映画オタクな大竹真奈実のブログです。ファンタジー、妄想系映画多め。制作しているプラバン+ビーズ刺繍のアクセサリーのことやSCHOLE活動日記も。

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タグ:映像美 ( 13 ) タグの人気記事

精神科医フロイトとユング、ユングの患者であり後に自身も精神科医となったザビーナ、この3人のドロドロとした人間ドラマを、デヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化した『危険なメソッド』観てきました。

クローネンバーグ監督は「ビデオドローム」と「イグジステンズ」の2本を昔観ただけなので、グロくてちょっと難しい監督という印象でしたが、今回はだいぶ前から楽しみで仕方なかったです。だって、フロイトとユングの話なんて、気にならないわけが無い!!

心理学とかの知識はゼロの私ですが、あまりにも変な夢ばかり見て自分の頭の中がどういう状態なのか気になった時期に、フロイトの「夢診断」を知りました。あの手の本は難しくてなかなか読めなかったけど、何となく「フロイトはなんでも“性的な願望”のせいにするけど、もう1人のユングって人の方が、判断に決めつけがなくて納得出来るかもなー」とぼんやり考えたことがありました。彼らが実際はどんな人たちで、どんなことを説いていたのか、映画だったらもっと分かるかも!と期待して見に行ったら、これが面白かったーーー。
前に座ってた人はイビキかいてたけど、私は集中しましたよ。

まず出演者がいい。この映画の主役ユング役はマイケル・ファスベンダー。いまいち覚えにくい顔つきのドイツ人俳優で、私が見たのはイングロリアス・バスターズです。映画デビューは「300」らしいです。この映画では存在感があるなーと感じました。

ユングの恩師であるフロイト役は、我が王、ヴィゴ・モーテンセン(LOTRのアラゴルンですよ)老けたよねー、そういう役なんでけどね。でもかっこいいです。

この映画のキーパーソン的なザビーナ役はキーラ・ナイトレイ、ここまでやるか?というほど顔を歪ませながらの精神患者役には女優魂を見ました。控えめに表現しても気持ち悪いです。もともと綺麗だけどあんまり好きじゃない顔の彼女…でもこの映画での頑張りはすごいと思いました。
あとはヴァンサン・カッセルもまた「ブラックスワン」系の色狂い役でウケました。

とにかく出演者の会話が中心の映画です、眠くなる理由も分かります。精神科医達の会話だし、なかなか難しいとは思います。でも興味のある人にとっては面白い会話になっているのではないかと思います。精神的に不安定な人の症状は一体どこから来ているのだろうか?過去のトラウマ?親との関係? そんなやり取りをしながら、ところで自分の精神は正常なのか?と急に思ってしまったり、実に人間らしい話!

精神科医だから難しい言葉を使って、あれこれ分析してるけど、引いて考えるとありがちで簡単な誰でも持ってる人間の欲の話だったりして。そう思うとアホくさくてちょっと愛おしい気持ちになります。

最初はやっぱり独断的なフロイトが変人に映るけど、だんだんとユングの方が堕落的な人間に見えてきて、その逆転するあたりがかなり面白かったです。ザビーナは化け物からだんだんと美しい人間に見えてきて、その変化が面白かったです。次はDVDで吹き替えで見たいです。
あと、映像も綺麗で良かったです、撮り方も面白いです。この手の題材が好きな人にはおすすめです。
クローネンバーグ監督の「イースタン・プロミス」見ないと!

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by pop-cult | 2012-11-05 11:57 | 外国の映画
もうなんか…、観終わった後に思わず「ふざけた映画だな…」と呟いてしまいました。『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール』などで知られるスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の、今公開中の映画『私が生きる、肌』のことです。

この映画、どうやら賛否両論の賛が多いらしいのですが、それ本当〜!?ってかんじです。私なんて久々に、観終わってすぐに頭の中で再編集が始まりました…。でも、“物議を醸す”映画という意味ではすごいのかと思います。
一緒に見たママちゃんも「あれはないね」の一言で切り捨てていましたが、他の人がどう思ったかがものすごく気になることは確かです。

アントニオ・バンデラス演じる天才医師が、自ら開発した人口皮膚を移植して、死んだ妻にそっくりの美女を作り上げるという、とてもグロテスクな話です。
これはネタバレ厳禁な映画なので、核心には触れずに感想を書きたいです。だいぶ辛口なのでご了承を!

まず思ったことは、最初の方にバンデラスの家でお手伝いさんをしている女性の元に、虎のコスプレをしたおかしな男が訪ねてくるのですが、そのシーン、すべてカットでいいと…。なんでこんなにどうでもいいシーンに、こんなに時間をとっているのか、観終わって疑問でしかありませんでした。

そのかわりに、もっとバンデラスの妻のこととか、案外サラッとしか登場しないし、娘のことももっと時間割いてもいいのでは?と思ってしまいました。

「そうだったの!?」という事実が分かった後は、「でも…、だとしたら、あのときのアレはおかしくない…?」のオンパレード。
例えば『シックス・センス』なんかは、主人公が幽霊ということを知ってからもう一度観ても「確かに誰とも会話してない!なるほど!」ってなるけど、この映画はならないと思います…。ま、きっと観客に「なるほど」と思わせたいとも思っていない気もしますが…。
ただ、あそこまで突拍子もないオチがあると、それまでの話が「オチがバレないように作った」感が目立ってしまって、ちょっとチープな印象に感じました。

終わり方も「ここで終わりかい!?」というタイミングで、私としては「この後どうなるか気になるでしょ!?」と思ったので、そこも観たかったです。しかし、あの後を長々やったとしても、もっとチープになっちゃう可能性もあるけど…。
映像も美しいし、音楽もかっこいいし、それでいてエログロっていう世界観は嫌いじゃないのですが、ストーリーだけ考えると、いくらなんでも観客をなめすぎではないかと、ちょっとした怒りすら感じました。あまりにも浅い。もう確信犯で、「この映画はバカな話ですが、楽しんでください」くらいの気持ちで作ってるのだとしたら、それはそれで新しいから良しとするけど、この映画を深読みするのは無理かと思います。
おしゃれな売り方してるけど、話はきっと「ムカデ人間」(見てないけど)と近いのかもしれないな〜なんて思いました。

ストーリーと関係ないですが、バンデラスの娘と仲良くなりかける青年の役をやっていた俳優さんが、すごくかっこ良くてツボに入りました。ジャン・コルネットという私と同い年の人で、新人さんらしい。これから注目したいです。

『トーク・トゥ・ハー』『バッド・エデュケーション』『ボルベール』と、この監督の映画は3本観ていて、どれも好きだったので期待しすぎたのかもしれないです。同じ話で、タランティーノが監督したら別物として面白かったかもしれないな、なんて妄想もしちゃいました。でも、どうやら『私が生きる、肌』はこの監督の初期作品っぽい空気らしいです。散々書いてしまいましたが、これからまだ見ていない初期作品も挑戦してみようかと思いました。

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by pop-cult | 2012-06-16 09:54 | 外国の映画
ファンタジー映画がここまでアカデミー賞にノミネートされるって、ロード・オブ・ザ・リング以来?ってことで、すごく気になっていました。私のまわりもすでに観ている人が多くて、「絶対3Dで観た方がいい」と言われていたので、3D字幕で観てきました!

『駅の中に1人で住んでいるヒューゴは、毎日駅の時計の針をまわす仕事をしている。仕事の合間には駅の中にあるおもちゃ屋さんに盗みを繰り返していた。盗みの目的は、死んだお父さんが遺していった壊れたからくり人形を直すための部品集めで、そのためにおもちゃを盗んでは解体してネジなどをからくり人形の修理に使っていたのだ。ある日いつものようにおもちゃ屋さんに盗みに入るとおもちゃ屋のおじいさんに捕まってしまう。おじいさんはヒューゴが持っていたからくり人形の解体図などが書かれたノートを見つけると、なぜか激怒してノートを燃やしてしまうというのだった。』

はじまってすぐに「これは3Dで観て良かった…」としみじみ思ってしまう映像満載でスタートします。ハリポタやアリスはなぜか観終わってから「綺麗だったけど、3Dじゃなくてもよかったかもな…」と思ってしまったのですが、「ヒューゴ…」は3Dをすごく意識して撮っているのが一目瞭然!私としてはこの映画の楽しみの60パーセントは映像と美術だと思うので、絶対3Dがおすすめです。

駅の中の雰囲気、衣装もいいし、音楽もかわいいです。ヒューゴが住んでいる駅の中は、迷路みたいでわくわくします。小さいときに、公園のアスレチックで遊んだ後は、そこを自分の秘密基地と仮定して、どこにベッドを置いて、どこに何を閉まって…とかしょっちゅう考えて遊んでいたのですが、その時の気持ちを思い出しました。

あとは好きだったシーンは、ヒューゴが悪夢をみるシーンも不気味で面白かったです。からくり人形も不気味に描かれているわけではないけど、人の形のロボットってそれだけで異様だから、ちょっと登場するだけで映画に深みが出てくる気がしました。
他には、おもちゃ屋さんのおじいさんの過去の回想シーンはもう全体的にツボです。書割りが出てくるともうそれだけでときめいてしまいます。ある映画好きの方が「映画愛に溢れている映画」って言ってたけど、観たらまさにその通りでした。映画が好きな人でこの映画を嫌いな人はいないんじゃないかと思います。なんだかんだでドストレートな映画愛の映画だと思います。
温かさが溢れるシーンではおもわず涙が出てしまうことも2度ほどありました(私はすぐ泣くタイプ)

しかし、ここまでほめておきながら、実はどっぷりと浸かれたかというと本音はそうでもありませんでした。美術も話もヒューゴくんの雰囲気も、すごく好きなのですが、なぜか集中力が途切れるときがあったり… 今思い当たるのは、私としては配役があまりしっくりきていなかったからなのかもしれません。まずおもちゃ屋のおじいさんのベン・キングスレーはなぜかあまり好きになれません。あの役がクリストファー・プラマーだったら良かったのに、もしくはジョン・ハートだったら最高だったのに…。それにおじいさんの娘(血がつながっていない)役は、『キックアス』のイメージが強すぎるクロエ・グレース・モレッツ。かわいいのは分かるんだけど、なぜかずっと違和感が消えず…演技が苦手なのだろうか、なんとなくダメでした。逆にヒューゴ君の暗いけど芯がある雰囲気も好きだったし、クリストファー・リーも意外と普通な役で嬉しかったです。
あとは、超辛口ですが、なんとなーく演出が「これやっとけばOKじゃない?」という、こなれた印象が残る箇所がすこしありました。でもそれってそう受け取る私がひねくれているだけなのかも…うーん。

一緒に観ていたN君は「いやー!面白かったね!あれはやっぱりジョニー・デップだったんだね!?」と明るく言っていましたが、ジョニーもどこに出ていたか分からなかったし、「面白かったー!」とすっきり言い切れなかった私はもやもやしていました。N君には「それ、途中で寝てたからじゃない?」と突っ込まれました。そうかも…ほんの一瞬コクっとしてしまいました、悔しいです!もう1回DVDで観たら印象変わるかもな。

この映画、映画館で見る価値はあります!気になっている方はぜひ劇場で、3Dでぜひ!!
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by pop-cult | 2012-03-06 00:18 | ファンタジー映画
地震が起きた前と後では、なんだか違う世界になってしまったような感覚があります。直接的な被害がなくても、この出来事がまったく関係ない人は日本にはいないと思うから、みんな不安や沈んだ気持ちで過ごしていると思います。
おもちゃとかフィギュアとかが所狭しと置かれている私の部屋は、色んなものが落ちてぐちゃぐちゃになりました。でも壊れたものはスノードーム1つ。そのスノードームは人からもらったものですごく気に入ってました。だからたった1つのスノードームが割れただけでも、すこし落ち込みました。これが家ごと流された方とか、もっともっと被害の大きい方が沢山いるんだと考えると…、そんな自分が恥ずかしいです。
でも、たくさんの人が「大丈夫だった?」と連絡をくれたこと、私の周りはみんな無事だったこと、それに映画を観たり音楽を聴いたり出来る環境が、自分には今も今までと同じようにあることに、とにかく感謝したいと、感謝するところから始めようと思いました。ちょっと偽善っぽいけど、なんだか久々にパソコンに向かったら、熱くなってしまいました。

地震が起きるよりも前ですが、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督のちょっとスピリチャルな映画「ラブリーボーン」を観ました。テレビCMで美輪さんがナレーションをしていたあの映画です。
『平凡で幸せな日々を送っている14歳の少女、スージー・サーモン。彼女はある冬の日に近所に住む男に殺されてしまう。最初は自分が死んだことにも気づかなかったスージーだが、あまりにも無念な死だったと気がつき、天国へ行くことが出来ず、悲しみに暮れる家族を見守り続けていた。』

この映画は殺された少女の目線で話が進んでいくので、今までにない感覚の映画でした。途中から家族を顧みず犯人探しに執着する父親の物語になっていき、同時に成長した妹の物語も進行していきます。
海外ドラマの「ゴースト」とかみたいに、よくこの世に未練を残した死者が、感度の高い人間に接触してくる話はたまにあるけど、「ラブリーボーン」はもっと妙にリアルというのか、嘘っぽい死者と生きている者との交流みたいなものはありません。ゴーストが出てくる話も夢があって好きですが、良くも悪くも「ラブリーボーン」には夢はありません。その分、父親の痛みが生々しくて、感動というより、ちょっと辛かったです。成長した妹をみて、スージーはうらやましく思うシーンも辛いです。でも、この映画には妙に「感動させたい」というようないやらしさが感じられなかったところが好きでした。

ピーター・ジャクソン監督はそこまでザ・大物俳優を使わないので、そこも良かったです。スージー役のシアーシャ・ローナンが大好きなのですが、彼女のかわいいけど芯がある独特の雰囲気が映画に深みを与えていていました。

深みがあるけど、重すぎなくて、かと言って明るくもないし、本当に観た人が不思議な気持ちになる映画だと思います、ストーリーで感動させるというより、もっと意外と感覚的な映画という印象でした。私が一番覚えているのは、瓶の中の舟と、スノードームが出てくるところです。ちょっとキーとなるものとして登場します。そんなわけで、スノードームのことを考えていたらこの映画がもう一回観たくなりました。死後の世界を信じる方、スノードームが好きな方には必見です。

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by pop-cult | 2011-04-05 00:36 | 外国の映画
『18世紀、悪臭の立ちこめるパリで、誰よりも優れた嗅覚を持って生まれたグルヌイユ。どんな匂いにも敏感で、あらゆる匂いに興味を持っていた彼は、ある日今までに出会ったことのない素晴らしい匂いに出会う。それはある少女の匂いだった。その匂いに魅了されてしまった彼は、誤って少女を殺害してしまう。それでもその匂いが忘れられず、調香師に弟子入りし、香水の製法を学んだグルヌイユは、異常な執着心で「その匂いを嗅いだ人の心を惑わせてしまう」ほどの香水を作ってしまうのだった。』


2007年に劇場公開された映画で、私はDVDになってすぐに1度観ていたのですが、その時は好きになれませんでした。でもベン・ウィショーが気になって再チャレンジ。不思議なことに映画って時間が経ってから観ると印象が変わるときがあるもので、今回はかなり楽しめました。

主人公グルヌイユを演じたベン・ウィショーは『ブライトスター』の時とは大違いで、同じ顔なのに別人で、気味が悪かったです。役者ってすごいと改めて感じました。この映画はまさにグルヌイユの伝記的映画だから、80%はベン・ウィショーのシーンなんです。だから彼の演技がダメだと、映画もダメになっちゃうと思うけど、彼は「何かに取り憑かれた人」の顔をしていて、妙な説得力がありました。殺してしまった少女の匂いを狂ったように嗅ぐシーンが一番気味が悪かったです。

映画全体の雰囲気は、舞台が18世紀のパリなので、ちょっと暗くてちょっと汚いけど、一応古き良き時代の空気が漂っているのですが、グルヌイユが生まれた場所なんかは死んだ魚が大量に放置されているような汚い市場なので、ものすごくグロテスクです。『ブリキの太鼓』級です。「悪臭」も含めて、匂いを感じさせるシーンは丁寧で、想像力をかき立てられます。衣装も美術も良いです。

その代わりに、話の展開はちょっと雑に感じるものがありました。「それ必要?」ってところで急に人が死んだり、空撮というのか、いかにもハリウッド映画!って感じの演出がたまに登場して、そこだけは少し鼻につきました。
登場人物のキャラクター設定もなんとなくザックリしてる印象があったし、私の希望では、脇役にもっとマニアックな役者を使っていたほうが、話に入り込めた気がして残念でした。(きっとそこには大人の事情があるのだろうが…)

生まれながらの才能に、可哀想な生い立ちと、主人公のキャラクター設定も極端というか、いかにも「お話の中の人」なのですが、そんな色んなツッコミどころを忘れさせてくれたのは、役者の演技力と美しい映像、あとは最後のあり得なさすぎるオチでした。

今まで散々驚かされながら、最後にはまた「えー!?」って言いたくなるような、変な潔さまで感じられるオチ…。初めて観た時は「なんだそれ…」って思ったけど、今回は急に「この映画はサスペンスじゃなくて、民話とか童話みたいなもんなんだ」って思えたので自分の中で腑に落ちたというか、やけに納得しました。
グリム童話とかって、変に話の展開が早くて、それでいて最後は救いがなかったり、戒めみたいなメッセージがあったりして、もやっとして終わるものが多い気がしますが『パフューム』もその後味が似ていました。

明るい気持ちにはならないけど、他にはない、ちょっと気持ち悪いけど心地いい疑問が残る映画です。わりとホラーですが1人で夜に観るのをおすすめします。

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by pop-cult | 2010-07-08 00:18 | ホラー映画
「ブライト・スター いちばん美しい恋の詩」という映画を観ました。チラシの写真がとても綺麗で、内容も知らずに何となく観たら、やけに気に入ってしまって自分でも驚いています。

『イギリスでは知らない人はいないという19世紀初頭の詩人ジョン・キーツ。当時の彼は、仲間からの評価は良くてもなかなか収入は得られずに、細々と詩を書き続けていた。そんな中、裕福で洋服を作ることにしか興味がない強気な女性ファニーと恋に落ちる。』

この映画にはとにかくキーツの「詩」が頻繁に登場します。もちろん恋する女性への気持ちを表した詩です。私は今まで「詩」に興味もなければ、キーツのことも知らなかったし、ロマンティックすぎるものには苦手意識があったのですが、キーツの言葉は純粋に美しくて感動しました。
だんだんと心惹かれていく二人は、とても自然でほのぼのしていて、あたたかい気持ちになりました。恋をしているとき特有の「周りが見えない」感や「好きすぎて苦しい」感も登場するのですが、それよりも二人がお互いにまじめに想い合うところがとくに印象的だったので、なんだか浄化された気がしました。

キーツの美しい言葉に負けていないのが、植物や光が美しい映像、出演者の表情(かわいい子供もいる)、ファニーが作る衣装も魅力的でした。ちなみにアカデミー賞で衣装デザイン賞にノミネートされているらしいです。時代物の衣装ってどれも一緒に見えるけど、この映画ではファニーの手作り感と彼女らしい元気な色使いも面白かったです。キーツの弟が亡くなったときにファニーが徹夜した刺繍も素敵でした。

キーツ役のベン・ウィショーは「パフューム ある人殺しの物語」での主役がとにかく怖かった彼です。その時の印象が強すぎて、はじめは犯罪者にしか見えなかったのですが、物語が進むにつれ、どんどん彼の不思議な空気に惹かれていきました。役者ってやっぱり凄いです。最後には彼がキーツ以外の何者にも見えなくなっていました。情熱に溢れていながらどこか破滅的なキーツ役がやけに似合っていました。前に観て鈍い痛みが残った「パフューム」をもう一度挑戦しようと思いました。

少し前に「ジェイン・オースティン 秘められた恋」という映画も観ました。イギリスの時代物だし、実在の人物の話しだし、格差が恋愛の障害になっているし、ジェームズ・マカヴォイが素敵だったし、なにかと「ブライト・スター」と共通点が多い映画でした。どちらかというと「ジェイン・オースティン」の方が起承転結がちゃんとあって、ちょっとだけ少女漫画的な箇所を気にしなければ、飽きずに観られる映画でした。
でも「ブライト・スター」の方が好きと思ったのは、とにかくシンプルで純度の高い映画だからだと思いました。お客さんにあまり媚びていないけれど、最低限の配慮と、美しさに対するこだわりが感じられて、たまにはこういうストレートな映画っていいなと思いました。わりと眠い系です。それに暗いです。でも好きでした。

ちなみに一緒に観た母は「やっぱり若い人は入り込み方が違うわね…」と眠そうに言っていましたが、彼女にとっても比較的好印象の映画だったようです。これからキーツの詩集を読んでみようと思いました。
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by pop-cult | 2010-06-16 23:51 | 外国の映画
ホルモンのバランスが崩れて、意味不明なエロい夢を見ることって、たまにありませんか?私は月1くらいであるのですが、この「薬指の標本」という映画は、そんな夢を美しく映像化したような、不思議でどこか怖い映画です。小川洋子さんの同名小説をフランスの女性監督が映画化した、2005年の映画です。私は小川洋子さんの本を読んだことがないのですが、これは原作をほぼ忠実に映画化しているらしいです。

『働いていた工場で、誤って薬指の先を切り落としてしまったイリスは、仕事を辞め、港町へと引っ越した。その町で彼女は、不思議な標本室で、標本技術士の助手という新しい仕事に就く。そこは、人々が「永遠に遠ざけたいと思う品々」を標本にしてほしいと集まる場所だった。ある日、イリスは標本技術士の男から一足の靴を「毎日履いてほしい。僕が見ていなくてもいつも。」とプレゼントされる。その靴がなじむにつれ、イリスは彼に夢中になっていく。』

ファンタジー映画ではないけど、すべてが現実離れしていて、一度観たら忘れられない何かがあります。火事で家を失った少女が家の焼け跡に生えたキノコを標本にと、持ってきたり。そんな仕事自体、幻想的です。美術もさりげなくて、すごく変わったことをしているわけではないけどどこも綺麗なのです。廃墟とか、枯れる手前のバラに美しさを感じるような…。映像も光が綺麗。イリス役の少女(フランス人モデルで、演技はこの映画が初めてらしい)の若々しくて危うい、官能的な雰囲気にも衝撃を受けます。

標本技術士の男も独特な雰囲気で、イリスのことをじーっと見ていて、2人とも口には出さないけど妄想しているのがわかる映画なのです。だからなのか、全体的に現実味がないのです。「靴に魔法をかけた」とか「妄想と現実が交錯している」とか「標本室は本当は実在しない」とかそんな捉え方も出来ます。監督も実際「青髭」というシャルル・ペローの超ダークな童話(禁断の部屋で次々に女を殺していく男の話)が想起されるはず、とインタビューで言っていました。たしかに標本室=禁断の部屋ともとれます。
でもポイントはイリスが徐々に惹かれていくというところ。彼女が標本技術士と怪しい関係になるところを想像するシーンが印象的でした。きっと女性はみな男性から「怖いくらい視線を感じたい」とか「密室で気まずくなりたい」とか「自分を綺麗にみせてくれるプレゼントを貰いたい」とか、そんな欲望が潜在的にある生き物なのだろうと思いました。

幻想的で美しい妄想映画、特に女性に観てもらいたいです。
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by pop-cult | 2009-06-19 00:21 | 外国の映画
またしてもホラー映画です。「ゾンビ」とは全くタイプは違うし、すばらしい映画ってわけではないのですが、ちょっとお気に入りの映画『フロム・ヘル』です。直訳すると「地獄より」…、でも怖い映画が見たいって時よりは、テンション低い日で、綺麗なものをぼーっと眺めたいという気分のときに観ている映画です。

「切り裂きジャック」をベースにした2001年公開のサスペンスホラーです。主演はジョニー・デップ。私の中でジョニー・デップがかっこいい映画ベスト3をあげるとすれば、3位『ショコラ』(不良っぽい雰囲気がはまり役)、2位『ギルバート・グレイプ』(金髪で長髪も似合う!)、で1位が『フロム・ヘル』なんです。出演作を全部観ているわけではないから、ジョニーファンには突っ込まれるかもしれないけど、この映画の半分は彼のかっこよさで成り立ってると思います、ほんとに。

ジョニーは超能力を使って事件を解くアバーライン警部という役で、警官のくせにアヘン屈に入り浸り、もうろうとした意識の中で「のどを切り裂かれた娼婦」を幻視します。映画には彼がアヘンをやっているシーンが何度も出てくるのですが、それがこの映画で一番気に入っているシーンで、出てくる小物たち(パイプや刺繍が施されたクッションや、不思議な色のバスタブ、赤い蓄音機など)がどれも魅力的で、なんといってもぼーっとしたジョニーが美しい!ホラー映画だから常におどろおどろしい雰囲気なんだけど、このシーンが怖さに綺麗さを与えてくれているから好きなんです。

アバーライン警部が出会う美しい娼婦メアリの役はヘザー・グラハムです。私が生まれ変わりたい女優、第2位の彼女です。(3位はユマ・サーマンで、1位はスカーレット・ヨハンソン)「オースティン・パワーズ デラックス」の時に「なんてかわいいのだろうか」とため息が出るほどだった彼女…。この映画の中でも時代物の衣装をだらしなく着ている姿がツボです。映画の残り半分は彼女の美しさで成り立っているといっても過言ではありません。ジョニーと並んでいるとうっとりとしてきます。

この二人以外にも面白い役者さんが出ています。
ジョニーを慕う後輩にロビー・コルトレーン、彼はハリー・ポッターのハグリット役の役者さんです。風貌はハグリットとだいぶ違うのに、顔を見てると今にも「先生!ハリーじゃねーです!」(「ハリー・ポッターと秘密の部屋」より)と叫びだしそうに見えます。この映画でもハグリット同様、心が優しい役で似合ってました。
あと、元外科医で人体博士(?)のウィリアム卿役にはイアン・ホルム。ロード・オブ・ザ・リングでフロドのおじさん役だったイギリスの名優さん。役の幅が広くて驚きます。この映画でもやはり小柄だったけど、ホビットには見えずとても自然な演技で流石でした。

有名な俳優が出演しているわりに特に賞とかとってないし、私としては好きなタイプだから面白いけど、犯人とかすぐ分かってしまうし、よくある話ではあります。事件の背景には王室やら秘密結社の存在があって、殺人は「自分の使命であり、最高の芸術」と思い込んでいる狂った人間が犯人というオチ。新しさはないけど、他の脇役の演技の臭さに目を瞑れば、「人体の不思議展」が平気な人はいけるはず。
ジョニーの幻視のシーンとかややチープな表現もあるけど、基本的に映像が綺麗です。きっと美術も歴史的なこととか詳しい人が見たら色々と間違いを指摘されそうだけど、私にとっては食器やらランプやら、壁紙もロウソクもどれも大好きで地味にテンションが上がる映画です。(最後のバッドエンドっぷりにはテンション下げられるけど)引きこもりたい気分のときは、怖いけどうっとりまったりする映画「フロム・ヘル」がおすすめです。
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by pop-cult | 2009-02-04 23:30 | ホラー映画
この映画もずっと観たいと思いながらぎりぎり先週観てきました。
やっぱりホラー映画は美しくあってほしいという気持ちが強まりました。最初からかなり期待していた映像が期待以上に良くて私の中では大ヒットでした。ストーリーも面白くてずっと緊張が途切れませんでした。

『ロンドンに暮らすX線技師のジーナは、家族や恋人と父親の誕生日を祝っていたが、部屋に掛けてあった大鏡が突然落ちて粉々に割れる。そこにいた全員は笑いながら「鏡が割れると7年間不幸が続く」という迷信の話をするが、不幸はそれ以上のものだった。ジーナは自分と瓜二つの女とすれ違い、後をつけると自分とそっくりの部屋に住んでいることを知る。その同様から交通事故を起こしたジーナは記憶の一部をなくし、恋人のことも同じ顔をした別人のように感じ始める。』

ショーン・エリス監督は前作「フローズン・タイム」の時も“動きが止まった美しい世界”の映像は素晴らしくて感動したけど、それよりもストーリーとか主人公のキャラクターが大好きだったので「ファッションフォトグラファーが凝った映像の映画を撮ったよ」みたいに言われているのは「それだけじゃないのに!」ってずっと思っていました。でも今回の「ブロークン」は話はホラーサスペンスだけど、ショーン・エリス監督が感じている“美”っていうものに、より共感できる映像でした。とにかく映像が素晴らしいです。レントゲン写真とか、カーテンとか、ステンドグラスの扉とか、いろいろな場所での光が美しい!逆光で影になっている人のシルエットも美しい!
ホラー映画にありがちな雨も、車の窓に水滴が残っていて光をうけてキラキラしていたり、怖さのための要素であってもちゃんと“美”を意識しているのが伝わってきます。監督は普段から日常のあらゆるものに“美”を感じて生きているのかな?と思ったら熱い気持ちになりました。素敵な人です。「フローズン・タイム」のベンが、床に落ちた豆に“美”を感じていたように…。
それに今回はほとんどがモノトーンだったり寒色系が目立つ中に、赤が差し色のように使われている所も印象的でした。後からプログラムを読んで「赤色は不吉なものの象徴で使用した」と知って、それには気がつかなかったので、今度はそこを意識しながら見るともっと面白いのではないかと思いました。

ストーリーは、この手の話が好きな人は楽しめると思いますが、好き嫌いはあると思います。最後にオチらしきものはあるし、私にとってはまさかの展開で面白い!!って思ったけど、疑問がすっきり解けるわけではないし、矛盾点を突っ込みだしたらキリがないのはたしかです。でも現実味はなくても、登場人物のキャラクター設定とか会話は自然なので、どこかリアルだったりします。だから安っぽさはなくて完成度は高いと感じました。そこは「フローズン・タイム」と共通している所です。

そういえば、久々に日曜洋画劇場を観たら「ゴーストシップ」とかいうホラー映画をやっていました。途中からだったので、話が分からないところもあったけど、呪われた船の話で、その船から帰ろうとすると霊たちが邪魔をして死んでしまうというような話でした。「ブロークン」とは同じホラーと言ってもタイプは全然違って、映像は特に凝ってる感じはしないし、登場人物たちの会話とか、話の流れもとにかくザックリ。でも美術は結構お金を掛けてるし、結局続きが気になって最後まで観てしまいました。最後は「なるほどねー」という結末でザックリなりに満足。意外と好きでした。「ゴーストシップ」は霊がたくさん出てくるし、人がたくさん死ぬけど意外と怖くなくて、断然「ブロークン」の方が怖いです。ショーン・エリス監督はこれからも注目していきます。

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by pop-cult | 2008-12-07 23:57 | ホラー映画
渋谷ツタヤでお気に入りのSFコーナーで、また初めて見掛けたビデオを借りてみました。一応ざっくりとSF冒険ファンタジーとパッケージには書かれていました。80年代あたりのファンタジーが好きなので何となく借りてみたんですが、まさかSFコーナーにこんな「ダンサー・イン・ザ・ダーク」的な絶望感を味わえる映画が眠っていたとは…。久々に落ちました。だれも観ないと思うけど、ネタバレしてるの読みたくない人は下の方は読まないでください(←アバウト)

「ウイザード」は1988年のニュージーランドとオーストラリアでの合作で、原題は「The Navigator - a mediaeval odyssey-」予知能力がある主役の少年のことを邦題はウイザードと、原題はナビゲーターと表しているみたいです。

映画のあらすじ…『1346年ヨーロッパで「黒死病」という恐ろしい伝染病が蔓延する。予知能力を持った男の子グリフィンが住む小さな村にも「黒死病」の脅威が迫ってきていて、旅から戻ったグリフィンの兄コナーから外の世界の絶望的な様子を伝えられる。村人たちが怯える中、グリフィンは「夜明けまでに世界の裏側にある大聖堂の塔へ十字架を供えれば村は助かる」という夢をみる。その夢を信じて、グリフィンとコナーたちは旅に出る。』

最初、主人公グリフィンの「予知夢」の映像から始まるんです。洞窟のような場所に松明が落ちていく様子や、水の中に浮かぶ十字架など、断片的に美しくてどこか悲しい雰囲気の映像が流れて、最初はその映像が何なのかわからないまま進んで行くのですが、だんだんその意味がはっきりしてきます。

『グリフィンたちが世界の裏側に通じるという洞窟を掘り進めてゆくと、何とたどり着いたのは現代(1988年)のニュージーランドの街。しかしその途中グリフィンは仲間の誰かが聖堂から墜落死する夢を見る。後にそれは兄のコナーであることを知り、グリフィンは大聖堂につくとコナーに代わって、十字架を抱えて塔に登り始める。』

全体的に台詞が少ない映画ですが、グリフィンとコナーの絆の深さが伝わってくるシーンが多くあります。少ない要素で伝えるべきことをしっかり伝えてくる感じがしました。あと不思議なのはグリフィンの「夢」はカラーの映像で、現実に起きていることは「モノクロ」で、色がない世界ってそれだけで異質なので、現実が異質な雰囲気であることが面白いなと感じました。また突然現代のニュージーランドの町に辿りつきますが、そのアイディアも斬新です。このあたりまでは頻繁に夢と現実が交差したりして、アートな雰囲気すら感じる映画だなーと思って観ていましたが、話は徐々に不吉な方向へ進みます。

『手袋が塔から落ちる夢をみて、手袋をしているコナーが塔から落ちるものと思い込んでいたグリフィンだったが、実はグリフィンこそが墜落死する人物であることを悟る。しかしそのことに気づいたときにはグリフィンの体はコナーに借りた手袋と共に宙を浮いていた。
夢はそこで覚める。実は途中からの出来事はグリフィンの夢だったのだ。洞窟の外から聞こえる村は助かった、という歓喜の声を耳にし、グリフィンたちは村に帰ろうとするが、その頃、グリフィンは自分の体の異変に気づく。見慣れない吹き出物、それはコナーから感染した黒死病に冒されていたという証であった。そしてグリフィンは一人村に戻ることを諦めて、感染していない村人を守るため、柩に収められ川に流されることを決意するのだった。』

一番信用していた兄のコナーによって不治の病を移される絶望感っていったら…。もちろんコナーは感染に気づいていなかったため、移すつもりなどなくグリフィンと接していたんです。それに最初からグリフィンが見ていた水の中の十字架の映像は、実は自分が川に流される映像だったとは。この残酷なオチには度肝をぬかれました。久々に深い絶望感を感じる映画でした。

全く心地の良くない映画ですが、一度見たら忘れられない種類の怖さがある映画です。映像的にも不思議で見応えはありました。冒険映画も、ハッピーエンドって決めつけてはいけないのだなということを学びました…。しかし終わり方が衝撃的だと確かに忘れないですが、なるべくハッピーエンドまでいかなくても、どこか希望を残して終わってほしいものだと思いました。「ウイザード」の後は、大好きな「ユー・ガット・メール」(トムとメグのラブコメ系)でも観て、気持ちを中和させるとちょうどいいかもしれないと思いました。
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by pop-cult | 2008-11-08 00:06 | 70s・80sファンタジー